NHKの大河ドラマ「龍馬伝」は最初の頃の数回を見てあとは見逃しているが、龍馬の剣術修行の場面なども出てくるのだろうか。龍馬が師事した千葉定吉(「大河」では里見浩太朗が演じる)の兄、千葉周作は北辰一刀流の創始者にして千葉道場の総師範。剣豪・剣術家と言えば、宮本武蔵などとともに必ず名を挙げられる人物であり、「諸州を修行して、他門と勝負せしこと挙げて算へがたし」と自ら言っている。その道場は玄武館と言い、幕末三大道場のひとつ。門下から多数の幕末の志士等を輩出した(清河八郎、山岡鉄舟、山南敬助等)。昔、漫画やテレビアニメで人気を博した「赤胴鈴之助」が先生と仰いだのが千葉周作であった、むろんその内容はフィクションだが覚えている方もあろう。

今、手元にその千葉周作の遺稿集がある。この本の中に剣術家ならではの面白い言葉が沢山あるので、現代にも通用しそうなものをいくつかと、併せて周作自作の和歌から気に入ったものをピックアップしてみた。(一部読みやすく改変・僕の下手な現代語訳を付けた) スポーツ(特に武道・格闘技等)をやる人などにはなかなか良いヒントがあるかもしれない。

★剣術初心の内は、稽古に理非善悪の沙汰は、余り深くは入らぬものなり、ただ師の教へに随ひ、稽古数をかけて、一心不乱に稽古すれば、自然と妙処に至るものなり。(初心者のうちは練習方法についてあれこれ正否を論じても仕方がない。ただ一心不乱に先生の教えに従って稽古をすれば自然と上達の域に達するものである)

★上達の場に至るに二道あり、理より入るものあり、業より入るものあり、何れより入るも善しといへども、理より入るものは上達早く、業より入るものは上達遅し。(剣術の上達には二通りの道がある。まず理屈から覚えようとする者と、先に体で覚えようとする者の二つである。どちらから入っても良いが、前者の方が後者より上達が早い)

★平日の稽古に、我れより下手を遣ふことは甚だ悪しゝ、兎角自分より上手なる者を撰みて修行すべし。(普段の稽古相手に自分より下手な者を選ぶのは大変よくない。自分より上手な者を相手に選ぶべきである)

★相手に得手不得手と云ふもの、必ず有る者なり、其の得手をさすれば、中々試合は六ケ敷きものなり、其の得手を見付けたるときには、却て其の業を此の方より向ふへ仕掛け、向ふの得手を此の方より強く仕掛くれば、向ふすくみて、其の業を出すこと叶はず、甚だ遣ひ能く成る者なり、是れ向ふの先に廻る故なり。(相手には必ず得意・不得意の技がある。試合中に相手の得意を見つけたら、逆にこちらからその技を仕掛けてやると良い。そうすると、先手を取られた相手はすくんでしまい、その技を繰り出すことが出来なくなる)

★真剣勝負の節、何にも構はず、立ち合ふと、直ぐに手の内へ打ち込み、其の儘腹を目掛けて突き行けば、勝利疑ひなしと云ふ、心得居るべきことなり。(真剣勝負の時、何も顧慮せず立ち合ったらすぐ相手のふところに飛び込みそのまま腹をめがけて突けば、勝利疑いなしということだ、心得ておくべきである)

★極意とは 己がまつげの 如くにて 近くあれども 見付けざりけり

★切り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ 踏み込み見れば あとは極楽

★切り結ぶ 刃の下ぞ 地獄なる 身を捨てこそ 浮かむ瀬もあれ

★思はじと 思へばまさる 起ふしに なほ思はるる 君がおもかげ