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「方法的洗脳」の是非

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「禁煙に効く本」として、世間でもてはやされている本があります。英国の禁煙活動家アレン・カー(Allen Carr)の『禁煙セラピー』という本です。この本は「タバコが止められる本」として話題となり、発行以来版を重ねております。ネット上でも禁煙に関係する掲示板などで頻繁に登場するので、読んだことがなくても書名くらいは知っている人は多いと思います。

私もこの本を購読したことはありませんが、内容についてはあらかた知っているつもりです。実際この本を読んで禁煙に成功した人も多いと聞きますし、私の友人にも何人かそういう人がいます。また、本書を知り合いから薦められたことも過去にありました。

しかし、この本に対して私は非常に批判的な感情を持っていることを、ここで明らかにしたいと思います。この本は、いわば「洗脳本」です。この本を読んで禁煙に成功した人たちは、かなりの割合で、きわめて先鋭的な「反喫煙主義者」になります。「タバコなんて百害あって一利なし」「タバコ製造メーカーは悪魔の手先」といった具合です。そして最近まで自分も喫煙者であったにもかかわらず、「喫煙者は不倶戴天の大馬鹿者」と言って憚らないような調子です。

何かおかしくないですか? そんなに「満身憎悪」の体で止めなければならないほど、タバコって大したものですかねえ。タバコの害については色々言われていますが、自分の周囲を見渡すと、結構それに対する「反証」が多く見いだされます。ヘビースモーカーの長生きおじいちゃん。癌で若死にしてしまった嫌煙者・・・、そんな事例はザラです。実はタバコの害なんてあまり大したことがないのでは・・・、これが喫煙・禁煙を巡ることどもを、割と素直に、ありのままに見た時の私の感想です。前にもこのブログで指摘しましたが、「煙草」よりも「酒」の害の方が甚大なのです。タバコは「害があるモノの一つ」に過ぎないのであって、癌、高血圧、心臓病、脳梗塞、公衆道徳の低下まで、全て「タバコのせいだ!」などと言うのは、明らかに行き過ぎです。ですが、『禁煙セラピー』を読んだ人は、そんなことを言い出しかねないほどタバコに対する「憎しみ」を募らせてゆきます。そのように「洗脳」されることによって禁煙に成功するのです。そして禁煙が成功して以降死ぬまでその「洗脳」が解けることはありません。禁煙できたんだから良いじゃない、めでたし!めでたし!で果たして済むのでしょうか?

非常に大きな問題である、と私は思います。

何かある「目的」を達するために、敢えて人を「洗脳」する、あるいは自分を「洗脳状態」におく、ということは正しいのでしょうか? いいえ、どんな場合でも「洗脳」はよくありません。人間の最も大切な「判断力」や「理性」を台無しにする所作であるからです。私に言わせれば、「洗脳される」ことより「煙草を吸う」ことの方が100倍マシです。事実を曲げてはいけません、曲げなくても針小棒大に言うのも「嘘」の一つです。

或る目的を達成するために、「嘘」を許容することは間違っています、たといその「目的」が「正しい」目的であっても、です。「方法的洗脳」は許してはいけない「悪」だと思います。これを許したら世の中どうなってしまうんでしょうか? ちょっと想像してみてください。戦争をなくすため、犯罪をなくすため、もし国家規模で「方法的洗脳」が行われるようになったら・・・。これはもう近未来SF小説の世界です。

悩み迷いながらも、狐疑逡巡しながらも、右往左往しながらも、我々は「自由意思」で選択をするから、良い行為は良いのです! 正しい行為は正しいのです!そう思いませんか?